2024/11/24
アイアンショットの常識が変わったかもしれないのが、2012年のマスターズだと思います。
今回はその象徴的なシーンを説明します。
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2012年のマスターズでアイアンショットの打ち方が変わったかも…!?
この年のマスターズはグリーンが硬く、各選手がその攻略に非常に苦労していました。
マスターズのグリーンは砲台グリーンが多く、傾斜も大きいので、ピンポジションによってはたとえよい所にボールを落としても、バックスピンが効きすぎるとボールが戻りすぎてグリーンから外れてしまいます。
逆に硬さに負けてバックスピンが効かない場合は、ボールは勢いよく跳ね上がりピン奥まで行ってしまうので、下りの難しいパットが残ります。
そんな中で快進撃を見せたのがPING ( ピン ) の契約選手達。バッバ・ワトソン選手、リー・ウェストウッド選手、ルイ・ウーストハイゼン選手、ハンター・メイハン選手です。
一時はトップ10にこの4名が入り、最終的には優勝がバッバ・ワトソン選手、2位ルイ・ウーストハイゼン選手、3位リー・ウェストウッド選手というピン契約選手によるワン・ツー・スリーフィニッシュが達成されました。
この快挙は衝撃的でありましたが、けして偶然の出来事ではないと思います。
彼らの放つセカンドショットのボールの性質が、他メーカーのクラブを使用している選手とは明らかに違っていたのです。
彼らのボールはグリーン上に優しく「 ポーンポン 」と2バウンド程度で止まり、傾斜をバックスピンで戻って行くことも、大きく跳ね上がってピンをオーバーすることもありません。
他メーカーのクラブを使用している選手のボールは、スピン量の多い勢いのあるボールで、受けている傾斜ではバックスピンで戻りすぎてしまったり、受けていない傾斜では跳ね上がってオーバーする場面が目立ちました。
グリーンがもっと柔らかければ、ここまでの差は出なかったでしょうが、この年のグリーンは非常に硬かったので、このような現象が起きたのだと思います。
■ PING ( ピン ) のアイアンが新しい流れを作った
そこでこのような差が起きた要因として、アイアンのクラブヘッドの特徴と打ち方の違いに注目しました。
ピンの契約選手はたとえトッププロであっても皆キャビティタイプのヘッドを使用しています。つまり、マッスルバックのタイプよりも低重心。
その低重心のヘッドの特徴を生かすように、ハンドファーストの度合いが非常に少ないハンドジャストと言えるインパクトのグリップ位置で、緩やかな入射角でボールをとらえていました。
その低重心のヘッドと緩い入射角によって打ち出されたボールは、打ち出し角が高い弾道で飛び出して、落下時はパラシュートのように非常にソフトにグリーンをとらえていました。
■ まさにパラシュートボールと言えるボールの性質
彼らの中でも、優勝したバッバ・ワトソン選手は打ち方が多彩で、様々なヘッドの入れ方をしていたのであまり目立ちませんでしたが、最も目立っていたのがルイ・ウーストハイゼン選手。
体重移動の少ない安定したスイングからパラシューボールを打ち続けて、見事にトップでフィニッシュ。
惜しくもプレーオフで敗れましたが、素晴らしいプレーを見せてくれました。
そしてこの結果を受けて、その後の世界のトップクラスのアイアンショットの打ち方に変化が現れたように感じています。
緩い入射角のインパクトを実現するために、ハンドファーストの度合いが減り、左への体重移動の量が少なくなってきました。
マッスルバックのアイアンで、それまではハンドファーストでボールをつぶすようにインパクトして、ホップするようなボールを打っていた選手達も、ハンドジャストの緩い入射角で打ち出し角の高いボールを打ち始めました。
おそらくヘッドの性能も進化して、マッスルバックでも打ち出し角が高いボールを打ちやすくなっているのではないでしょうか?
■ 新しい打ち方のためにスイングも変化している
このように2012年のマスターズ以降、徐々にグリーンに落下するボールの性質が変わり、ソフトにランディングするようになってきました。
そのパラシュートのように落下するボールを打つために、スイング軸が左に移動しなくなり、ハンドファーストの度合いが減少。
当時と現在のスイングを比較すると、スイング中の左への腰の移動量が激減した選手が非常に多くなっています。
勿論、彼らはパラシュートボールばかり打っている訳ではなく、状況に応じてハンドファーストのインパクトでボールをつぶすように打つこともあります。
しかし現在の世界のゴルフでは、それはあくまでも応用編と言えるテクニックで、基本的にはハンドジャストで緩い入射角のインパクトが主流になっているように見えます。
皆さんもその点に注目してPGAツアーをご覧下さい。