今回はトップクラスの選手でも失敗するほどの、かなり難しいアプローチの対処法を説明します。
【 左足下がりのアプローチの極意は「自分の角度」を作ること!! 】でも説明している内容ですが、今回は別の方向から説明してみたいと思います。
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トップクラスでも失敗する難しいアプローチの対処法
アマチュアながら日本オープンを制した蝉川泰果選手のプレー内容は、とても魅力的なものでした。
どんどんピンを狙って行く攻撃的なプレーでプロの選手達を圧倒し、今後の男子ツアーにも大きな影響を与えるくらいのインパクトを残しました。
ところがそんな蝉川泰果選手でも、4日目の9番ホールではアプローチの失敗を繰り返し、なんとトリプルボギーを叩いてしまう場面がありました。
そのアプローチの状況というのは、セカンドショットを攻めすぎてグリーンオーバーし、グリーン奥の左足下がりのラフから打つことになったシーンですが、ラフはかなり深く、ボールは「 スッポリ 」と芝の中に埋もれていました。
ただし上からの映像ではボールはよく見えていたので、このような状況ならば、「 夏ラフ 」の時期であれば一般アマチュアゴルファーにも起こりえる状況でもあります。
そこで今回は、その場面の状況を引用しながら、失敗しないための対処法について説明したいと思います。
急傾斜のアプローチショットは、角度をつけて対処すべし!
■蝉川泰果選手のミスの状況
グリーン奥の深いラフで、傾斜は20°くらいの左足下がりでした。
ボールからグリーンエッジまで5ヤードくらい、そこからピンまでは下りで10ヤードくらいだったと思います。
グリーンの状況は、スティンプメーターで13フィートとかなり速く、コンパクションもメジャー大会用にかなり硬く仕上げられていました。
この状況だけでもかなり難しそうな場面ですが、それも優勝争いの最終日となれば、かなりのプレッシャーを感じることになるショットですね。
その場面で蝉川泰果選手はピンに対してスクエアに構え、フェース面を大きく開いてアプローチショットを行ったのですが、なんとフェース面がボールの下を潜り、10cm程度しか進まないミスを2回も繰り返してしまったのです。
そこでたまらず9番アイアンくらいで「 コツン 」と打つ方法に切り替えて、なんとかラフから脱出できたものの、勢いのついたボールはピンを大きくオーバーして、結局5オン2パットのトリプルボギーになってしまいました。
■ 失敗の原因
ボールのライの状況と、本人にかかる極度のプレッシャーを考えれば、トップクラスの選手であっても、今回のようなミスが起きても不思議ではありません。
しかしもう少し打ち方を工夫していれば、そのミスは確実に防ぐことができたと思います。
そこでズバリ、失敗の原因は2点でした。
❶ フェース面を開いていた
蝉川泰果選手は当時はまだアマチュア資格でしたが、多くのプロ選手と同様に、あの場面のアプローチではフェース面をかなり大きく開いていました。
日本のゴルフ界は、アプローチショットやバンカーショットでは、フェース面を大きく開くことが常識になっていますが、外国選手がその開き方を見ると、「 なんでそんなに開くの? 」と驚くほどに、かなり大きく開いているそうです。
たしかにフェース面を開けば、その分だけボールは飛ばなくなるので、芝の抵抗の大きいラフに負けないように強く振ることができますが、58°や60°のウェッジを大きく開けば、今回のような深いラフではかなりの確率でボールの下を潜ってしまうはずです。
❷ アドレスがスクエアスタンスだった
左下がりのラフからうまく打つためには、ボールの手前のライへの対処が重要になりますが、今回のように20°くらいもの急傾斜となると、その対処にはかなり難易度が上がっていきます。
一般的な打ち方としては、スクエアスタンスで構え、傾斜に沿うように左側に傾けた身体を左足1本で支えるようにアドレスすることが基本となっていますが、そのようにセットアップしてスイングしてみても、実際にはボールの手前のライがかなり邪魔になってきます。
そこで蝉川泰果選手は、ボールの手前のライを避けるように、ボールの真後ろにクラブを鋭角的に上げて、そこからピン方向に対して真っすぐ振り下ろしていくようなスイング軌道になっていました。
しかし残念ながら、オープンフェースと直線的な軌道が組み合わされると、たとえラフがもっと浅かったとしても、クラブヘッドはボールの下を潜りやすくなってしまいます。
■ 成功への対処法
説明の前に、ここでもう一度【 左足下がりのアプローチの極意は「自分の角度」を作ること!! 】の内容を確認してみて下さい。
今回の蝉川泰果選手のような難しい場面でも、その記事の内容のように「 自分の角度 」を作ってスイングしていれば、フェース面がボールの下を潜るリスクは少なくなり、ミスの確率を大幅に減らすことが可能になります。
そのための秘訣が次の6点です。
① フェース面は開かない
54°~60°くらいのウェッジであれば、フェース面を開かなくても「 ふわり 」とボールは柔らかく飛んで行きます。
➁ ハンドファーストにしない
ハンドファーストになってしまうとボールの飛び出しが強くなるので、このようなシーンでは厳禁です。
③ 左足下がりの傾斜に合わせて体勢を作る
例えば20°の傾斜ならば、身体も傾斜通りに20°傾けてアドレスすることが理想的なのですが、スイングでぐらつかないように身体の安定を保つためには、10°~15°くらい傾けるイメージが現実的でしょう。
左足でしっかりと体重を受け止めて、自分なりの安定した体勢を作りましょう。
④ 自分のスイングに合うスタンスの向きを作る
今回のような急傾斜では、スイング軌道がボールの手前のライに邪魔されないことを最優先に考えましょう。
ところが20°くらいの急傾斜になると、たとえ身体を傾けてアドレスしたとしても、ボールの手前のライがかなり邪魔になってきます。
そこでその傾斜をもっと緩やかにするために、、クローズドスタンスかオープンスタンスにアドレスの角度を変えてみて、ボールにクラブヘッドを入れやすくするための「 通り道 」を作れるように工夫しましょう。
下りの傾斜に対して真っすぐスイングするよりも、斜めのスイング軌道を作っていく方が、ボールの手前のライの影響が緩くなっていきます。
ただしクローズドスタンスがよいのか、それともオープンスタンスがよいのかは、各自の感性とスイングのクセによって変わってくるので、あくまでも自分にとって最適な「 自分の角度 」を追求して下さい。
⑤ スイングのコツをつかむ
クローズドスタンスなのか、オープンスタンスなのかを試しながら、自分に合うスイングの向きとその角度が決まったら、あとはスタンス通りに、大きな円軌道を作るようにスイングするだけです。
クローズドの場合はインから入りすぎないように、オープンの場合はフェードイメージで、どちらも急傾斜の中でできる範囲の大きなスイング軌道を作りましょう。
距離感はその時々の状況に合わせる必要がありますが、慌てず、ビビらずにスイングすれば大丈夫です。
コックを大きく使ったり、右肘をすぐに曲げてしまうと、小さなスイング軌道になってしまい、失敗の確率が高くなるので注意しましょう。
⑥ メカニズムを信じてスイングする
傾斜の方向が目標を向いている場合は、ボールのライとしては「 単純な左足下がり 」の傾斜になりますが、それだとボールの手前のライが盛り上がっているように感じて、ダウンスイングでクラブヘッドが引っかかりやすくなります。
そこで「 単純な左足下がり 」の傾斜を、もっとボールの手前のライが緩やかになるように、「 傾斜の方向 」を変えるように考えてみましょう。
たとえばクローズドスタンスならば、ピン方向よりも右を向くことになり、その体勢に対する傾斜の状態は、「 左足下がりで前上がり 」のように少しだけ変化し、ボール手前のイン側の空間を大きくすることができます。
その傾斜に沿うようにクラブヘッドのスイング軌道を作ると、フェース面は前上がり気味の斜面に沿って動くことになるので、フェース面に包まれるようにボールがつかまり、スタンスの向きよりも左方向、つまり勝手にピン方向に飛んで行きます。
そしてクローズドスタンスだと、ボールは捕まりやすいので、かなり深いラフであってもボールを飛ばしやすくなります。
しかしたとえクローズドスタンスで角度を作ったとしても、プロのようにフェース面を開いてしまうと、ボールは包まれずに滑ってしまい、少し勢いのある低いボールになってしまいます。
プロはそのボールが滑っている状態を、「 スピンが効いている 」と感じるみたいなのですが、残念ながらそれは勘違いなのです。
オープンスタンスはその逆で、ピン方向よりも左を向くことによって、今度は傾斜の状態が「 左足下がりで前下がり 」のように少しだけ変変化して、ボール手前のアウト側の空間を広く使えるようになります。
その傾斜に沿うようにスイングすれば、前下がり気味に動くフェース面によって、ボールが右側に滑るように作用するので、スタンスの向きよりも右方向、つまりこちらのスイングでも勝手にピン方向に飛んで行きます。
その代わりオープンスタンスの場合は、ボールが飛びづらく、クローズドスタンスよりもクラブヘッドがボールの下を潜りやすいので、思い切りよく大きめに振る必要があります。
そしてもちろんオープンスタンスなのにフェース面を大きく開くことは、最悪なメカニズムになります。
それなのにプロは、このような状況でもフェース面を開いてしまうのですが、失敗したくないので、ハンドファーストにしたり、フェース面を強引に閉じる作業で誤魔化すことになりますが、あまり上手には打てていません。
以上、このように「 自分の角度 」で傾斜の方向を変えて、あとはそのメカニズムを信じて振り抜くだけで、ボールはイメージ通りに飛んで行ってくれて、誰もがプロより「 ふわり 」とした柔らかいボールが打てるようになります。
■ 写真で確認
※ 写真になると、傾斜の大きさもスタンスの角度も緩く見えますが、実際にはもっと大きな角度になっています。
● 30°くらいの急傾斜をクローズドスタンスで打ちます
1⃣
2⃣
3⃣
写真では分かりづらいのですが、実際の現場はアドレスすることも困難な30°くらいの急傾斜です。
その急傾斜の中でクローズドでアドレスして、右肘を曲げすぎてイン側から入りすぎないように気をつけながら、斜面に沿うようなスイング軌道を作ります。
写真のようにボールの左側の芝までしっかりと届くような円軌道を作れれば、ボールは「 ふわり 」と柔らかく、スイング軌道よりも左方向に飛び出していきます。
● 25°くらいの急傾斜をオープンスタンスで打ちます
4⃣
5⃣
6⃣
こちらも写真では分かりづらいのですが、現場は25°くらいの急傾斜です。
オープンにアドレスして、フェードイメージで左方向に振り抜いていけば、ボールは「 ふわり 」とクローズドよりももっと柔らかく、スイング軌道よりも右方向に飛んで行きます。
このように傾斜角が25°くらいまでか、ラフがあまり深くなければ、オープンのカットイメージの方が簡単に打てると思いますが、それ以上の急傾斜やラフが深くなると、クローズドよりもボールの下を潜りやすくなるので気をつけましょう。
◆ それでも失敗する場合
このように「 自分の角度 」を作って対処しても失敗を重ねる場合は、単純にクラブヘッドがボールに届いていないことが原因だと思います。
届かない原因は、ヘッドアップや意識の先走りによって、スイング軌道がズレていたり、歪んでいるはずです。
急傾斜の中でもスイング軌道の最下点が合うように、ボールの位置を正しく決めて、円運動であるスイング軌道のズレや歪みを作らずに、自分が作った角度通りにスイングできれば大丈夫です。
無理にボールに届かせようとして、手先を調整して円軌道の歪みを作ってしまうパターンが多くなるので気をつけましょう。
今回のまとめ
今回は蝉川泰果選手が失敗してしまった場面を引用して、難しいアプローチの対処法を説明しました。
トップクラスの選手であっても、難しい状況ではミスが起こるものですが、もっと新しい発想で正しい理論とメカニズムを作り出せるならば、そのミスはもっと減らせるはずです。
残念ながらお手本になる選手がとても少なく、映像としてのイメージ作りは難しいのですが、まずは自分で実際に試しながらコツをつかんで下さい。
コツがつかめれば、意外なほどにうまく打てることに誰もが驚くはずです。
さてその蝉川泰果選手は今週プロ転向を発表して、マイナビABCチャンピオンシップから本格的に男子ツアーに登場します。
かつての石川遼選手のような大きな変化を引き起こしてくれることを期待したいと思います。