アマチュアゴルファーが簡単に上達できない理由は、けしてゴルファー本人の技術や能力だけの問題ではありません。
そこには、ゴルフを大人になってから始めた人にとって、マッチしていないスイング理論と、本当にマッチするクラブが販売されていないことこそが大きな問題なのです。
【 スイング理論編 その1 】と【 スイング理論編 その2 】では、一般的なスイング理論がマッチしない理由を説明しました。
今回のクラブセッティング編では、市販されているクラブがなかなかマッチしない理由について考えてみましょう。
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本当はもっと打ちやすいクラブがあるはず!
新製品が発売されるたびに欲しくなり、毎年のようにクラブを買い替えている人も多いはず。
誰にとってもクラブ選びは、ゴルフライフの楽しみの中でも大きなウェートを占めているものです。
ただし、買い替えるたびに打ちやすくなり、スコアも伸びていくかと言うと、現実はそんなに甘くはありませんね。
それどころか、買い替えるたびに逆に調子を崩したり、飛ばなくなったりする人が意外にも多いことを見過ごしてはいけないと思います。
今回はその点についてじっくりと考えてみましょう。
クラブセッティングの問題点とは…!?
「 ゴルフは道具だ 」と言う説がありますが、それは間違いなく事実です。
自分の打ち方とフィーリングにピッタリと合うクラブが手に入るのなら、ゴルフは飛躍的に簡単になるはずです。
ところが残念なことに、そのピッタリと合うクラブが簡単に手に入らないので、ゴルフが必要以上に難しくなっているわけです。
毎年進化したと言われる新製品が発売されているので、もっと打ちやすくなってスコアアップするはずなのに、現実にはほとんどの人がその恩恵を受けていません。
それはなぜなのか?
その理由として、市販されているクラブのセッティングの問題に着目するべきだと思います。
一般的なゴルファーにマッチしていないクラブセッティングで販売されているものが多すぎるのです。
自分に合わないはずのクラブを、うまく振れるようになるためにスイングを悩んでいるのなら、それは全くの本末転倒なので、まずは自分に合うクラブを先に見つけることがベストな道。
そんな道を歩めるように、自分のクラブセッティングについて見直してみましょう。
そのクラブセッティングの問題点を5つの項目に分けて説明します。
➀ 最新こそが最良…ではない!
ほとんどのクラブが最新のクラブヘッドと最新のシャフトを組み合わせて市販されていますが、まずはそこに大きな問題点があります。
なぜなら、たとえ最新のクラブヘッドと最新のシャフトがそれぞれ最良だったとしても、それを組み合わせても最良になるとは限らないからです。
そのゴルファーにとっては、クラブヘッドは新しいほうがよかったけれど、シャフトは前のモデルのほうが自分には合っていた、というケースがあり、もちろんその逆のケースもあります。
とくにシャフトの相性はとても重要で、シャフトさえ自分に合っていれば、クラブヘッドの性能を正しく見極めやすくなります。
つまり正しい方法としては、まずは自分に合うシャフトを見つけ出し、そのシャフトをベースにして違うクラブヘッドを試したほうが、自分にピッタリと合うクラブを見つけやすくなるわけです。
たとえば松山英樹選手は、ダンロップ契約でありながら、毎年他メーカーを含めて数多くの最新のドライバーヘッドを試していますが、シャフトは常にツアーADのDIを使用しています。
申ジエ選手は、スピーダーエボリューション (Ⅰ)を数年使用した後、近年にそれと似た特性のスピーダーエボリューション Ⅳに変更。
特性が明らかに違っていたⅡとⅢは使用せず、Ⅳよりも新型のⅤ、Ⅵ、Ⅶも使用していません。
このように、まずは自分の信頼できるシャフトが見つけだし、そのシャフトをベースにしてクラブヘッドを選択する手法をトッププロ達も行っています。
ところが市販される最新モデルは、必ず最新のクラブヘッドと最新のシャフトを組み合わせてあるので、ユーザーとしては、特性が合わないのはクラブヘッドなのか、それともシャフトなのか、その判定は難しいわけです。
そんな中で、タイトリストが画期的?な試みを始めました。
最新のTSiシリーズのドライバーに、松山英樹選手も愛用する2009年発売のツアーADのDIが標準カスタムシャフトに設定されたのです。
ハードヒッター向けのTSiシリーズに、安直に最新モデルのシャフトを設定するのではなく、ハードヒッターが好む特性のシャフトの中から新旧に関係なく選び抜いたシャフトを設定したことは、とてもよい傾向だと思います。
しかも、DI-6だけでなくDI-5も用意されていて、長さも45インチという長すぎない設定。
他メーカーの他のモデルもこのような手法になれば、皆さんのクラブ選びはかなり楽になるはず。
② 的外れな設定が多い
自分に合うクラブを見つけることが難しい理由は簡単で、どのメーカーも狙っている的が外れているからです。
練習場で観察していると、最もユーザー層が多いと思われるのは、ベストスコア90 ~ 100くらいで、ヘッドスピードが38m/s ~ 43m/sくらいのゴルファーだと思います。
ところがなぜか、このようなゴルファーに適していると思われるスペックのクラブを見つけることは困難なのです。
たとえば適していそうなドライバー用シャフトのスペックを具体的に表せば、シャフト重量が55g ~ 65g、トルクが4 ~ 5で、シャフトの長さは44.5~45インチ。
全てのメーカーがこのようなスペックを中心にラインナップしてくれれば、多くのゴルファーが求めている的には、それほど外れていないはずなので、皆さんのドライバー選びは飛躍的に楽になります。
ところがなぜか、各メーカーはそのスペックの領域をあえて避けるように設定されているのです!
③ 軽くて、長すぎる!
近年の市販クラブの傾向は、間違いなく軽すぎて、長すぎます。
軽すぎて、長すぎるクラブは、誰にとっても難しいものです。
それよりも逆に、重すぎて、短すぎるクラブのほうが意外にも簡単なのに…。
メーカーやゴルフ関係者が、なぜこれほどに軽く、長く、と誘導したがるのかは不明ですが、皆さんはそのおかしな傾向に惑わされないほうがよいと思います。
④ 既成概念を取り除くべし!
ヘッドスピードが●●ならば、このくらいのスペック。
ベストスコアが○○○ならば、このくらいのスペック。
ゴルフ界はこのような暗示にかけられやすい状況が出来上がっていますが、そこで示されるスペックは皆さんにとってアンダースペックになっている可能性が大です。
たとえば僕の奥さんの場合、夏用ドライバーのシャフトがディアマナ S73のSフレックスというハードスペックですが、シャフトの長さが44インチ以下なので、ちゃんと振り切れています。
アイアンシャフトにはモーダス3 105のSフレックス、ウェッジシャフトにはダイナミックゴールド 120のRフレックスを使用していますが、けして怪力なわけではなく、女性としては多少パワーがある程度なのに、このくらいのスペックのほうが使いやすくて結果がよいので選択しています。
僕の友人の男性の場合も、僕がアドバイスを始める以前は、ドライバーシャフトは純正シャフトの60gのSフレックスで、アイアンシャフトはN.S.PRO 950のSフレックスだったものが、その既成概念を取り払ったところ、現在のドライバーシャフトはツアーAD クアトロテック 65のXフレックスで、アイアンシャフトはダイナミックゴールド EX ツアーイシューのXフレックスという、まるで男子プロのようなスペックに変わりました。
その友人はベストスコアが85で、ヘッドスピードは43m/sくらいなので、一般的に見れば超ハードスペックなのですが、このくらいのスペックのほうが断然打ちやすいそうで、シャフトを重くするに比例して、スイングが安定していきスコアもよくなっています。
このように、たとえゴルフ界の常識からかけ離れていても、本人が打ちやすければ重いシャフトでも全く問題はありません。
そして一番重要なポイントは、長すぎないことなのです。
⑤ 重くて柔らかいシャフトが狙い目!
ユーティリティはいろんな場面でとても重宝するクラブですが、残念ながら苦手にしている人が多いようです。
しかしその点についても、本人の問題よりも、よいセッティングのクラブが少ないことが問題なのです。
残念ながら市販されているユーティリティは、ちょうどよい重さのシャフトは硬すぎて、ちょうどよい柔らかさのシャフトは軽すぎるという傾向があります。
他のクラブにも通じることなのですが、特にユーティリティには、少し重くて、少し柔らかいシャフトが適しているはずなのですが、残念ながら市販されているクラブにはそのような設定が少ないので、実際に試打で試してみることが困難なのです。
もしユーティリティが苦手ならば、カーボンシャフトは70g台か80g台のRフレックス、スチールシャフトは100g台のRフレックスを一度試してみて下さい。
苦手意識が解消されるかもしれませんよ。
今回のまとめ
今回説明したように、現在市販されているクラブのセッティングでは、中心となるべきユーザー層に適していないので、その結果として皆さんが自分に合うクラブを見つけられないのは仕方ありません。
なんとかしてその中から自分に合うクラブを探し出すのか、リシャフトやシャフトカットをして自分に合わせるのか、それとも鉛の調整でセッティングを変えるのか、いずれかの方法で対処する必要があります。
本当は自分に合っていないクラブなのに、いつまでもスイングに悩んでいるのは無駄なこと。
そんな状態では上達できるはずがありません。
ゴルフ上達への道は、スイングの比重が5割、クラブの比重が5割、というくらいに割り切って、もっとクラブにも助けてもらいましょう。
そのヒントになるように、これからもクラブセッティングについての説明を続けたいと思います。
まずは【 クラブセッティング 】の記事を参考にして下さい。