パッティングのインパクトロフトについて、【 その1 】から説明を続けています。
今回は、プラスロフトについて考えてみましょう。
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インパクトロフトがプラスロフトのメリットを考える
【 その1 】の記事をアップした後、書店で月刊ゴルフダイジェストをチェックしてみると、タイミングよく、【 こちら 】の実験を実際のグリーン上で検証する内容の記事が掲載されていました。
その記事によると、パターマットの上だけでなく、実際のグリーン上でもマイナスロフトのほうが転がりがよく、ショートパットなら入る確率が上がった、ということです。
その内容にはある程度納得したものの、それよりも注目したのは、その記事の企画に参加していた横田真一選手のコメントです。
「 マイナスロフトは、芝目や傾斜の影響を受けやすいので、ボールの曲がり幅が大きくなるのではないか? 」…さすが鋭い!
まさにそのポイントは、今回の【 その2 】で説明する予定の大事なポイントで、マイナスロフト派が多い日本のゴルフ界の中にも、そのような感覚を持った選手が存在することに安心しました。
それではそのポイントを中心にして、今回はプラスロフトについて考えてみましょう。
■ 世界のトップクラスはなぜプラスロフトが主流なのか?
まずは実例を紹介します。
● 実例その1
PGAツアーの3月15~18日開催のアーノルド・パーマー招待で優勝したローリー・マキロイ選手の例です。
その大会前まではパターが絶不調だったそうです。
本人の感覚によると、ボールがグリーン面に食い込むように転がるフィーリングになっていたそうです。
そこでそのフィーリングを解消するために、パターのロフト角を増やして、アーノルド・パーマー招待に臨んだところ、パッティングの感覚がよくなり見事に優勝。
もともとローリー・マキロイ選手は、パッティングのインパクトロフトをプラスで打っていたにもかかわらず、それでもグリーン面に食い込むような転がりに感じてしまう理由とは…?
それは日本の国内ツアーとは大きく違う、海外のコースのグリーンの状態に影響されているようなのです。
【 その1 】で説明したように、日本の国内ツアーのグリーンの状態は、世界の中でも最高と言われるほどの仕上がり。
一方のPGAツアーのグリーンは、テレビで見るかぎりではよく分かりませんが、芝の密集度が粗く、グリーン面には細かな凹凸が多いそうです。
そのようなグリーンの状態では、単純にボールを早く順回転にさせても、本当の意味でよい転がりにはならないのです。
逆にボールの打ち出し直後に、一旦芝の上を滑るように転がってから、最終的に順回転になるようなボールの特性のほうが、本人の感覚にマッチするものと思います。
そのために、パターのロフト角を増やす、またはインパクトロフトを大きくする、という方法が取られているのではないでしょうか。
● 実例その2
10年ほど前に話題になった件ですが、タイガー・ウッズ選手とフィル・ミケルソン選手が、マスターズの超高速で起伏の大きいグリーンを攻略するために、6°~7°のロフト角の大きいパターを用意して戦っていたそうです。
僕の記憶が確かなら、その話を知った片山晋呉選手も、マスターズ4位の時に同じようなロフトのパターを使用していたはずです。
ロフト角が多いほうが、上り下りの急な傾斜や、曲がり幅の大きい傾斜に対応しやすいのです。
最近ではそのようなパターのロフト角の大きさは話題になっていないので、パターのロフト角ではなく、インパクトロフトをプラス側に大きくすることで対応しているのかもしれません。
このような2つの例だけでなく、海外の選手はグリーン周りからパターでランニングアプローチをするケースが多く、その流れからもプラスロフトのインパクトになっていると思います。
■ インパクトロフトが大きくなることのメリット
次に、「 マイナスロフトは、芝目や傾斜の影響を受けやすいので、ボールの曲がり幅が大きくなるのではないか? 」という横田真一選手のコメントが正しいことを、ここでも2つの実例で説明します。
● 実例その1
【 失敗しないランニングアプローチの方法 】で説明した「 ユーコロ 」というテクニックがあります。
この「 ユーコロ 」を試してもらえれば分かりますが、パターよりも確実にグリーン上の芝目や起伏に左右されずに転がり、ボールのスピードも簡単にコントロールすることが出来ます。
その理由は、ロフト角の大きさから作り出される、絶妙なボールの転がりによるものなのです。
打ち出し直後に、少しの間ボールが滑るように飛んだ後に、徐々に順回転の転がりを始める特性が、曲がりの少ない、距離感を合わせやすいボールの感覚になっています。
● 実例その2
グリーン周りからのアプローチでピンの位置が近い場合、外国人選手はインパクトロフトがプラスなので、パターで狙うケースが多いのですが、日本人選手はウェッジのフェース面を被せるようにして、ボールを転がしてカップインを狙うケースが多く見られます。
どちらの打ち方であってもそのようなケースでは、多少の傾斜を無視して、ほぼ直線的にカップを狙っていますね。
ウェッジのフェース面をどれだけ被せたとしても、もちろんそのインパクトロフトはかなりの大きさです。
つまり、インパクトロフトが大きいほうが、芝目や傾斜に左右されないことは、日本人選手も感覚的には知っているはずなのです。
それなのにパターを持った途端に、「 早く順回転に… 」となってしまうのは、なぜなのでしょうか?
たとえば、カップまで5mの距離で、かなり曲がるラインがあったとします。
そのラインを、パターでマイナスのインパクトロフトで打つと50cm曲がるところを、プラスロフトで打てば曲がり幅は40cmに収まり、「 ユーコロ 」なら20cmに収まり、そしてウェッジなら10cm程度しか曲がらなくなるでしょう。
それぞれのインパクトロフトの違いによって、ボールの曲がり方はそれくらいに変化します。
当然ながら、曲がり幅が少ないほうがカップインの確率は上がりますね。
このような現象から考えても、外国人選手のパッティングがプラスロフトになっている理由が分かると思います。
アマチュアゴルファーのインパクトロフトはどうするべきか!?
アマチュアゴルファーがラウンドで使用するコースのグリーンの状態は、国内ツアーのグリーンと比較すれば、グリーン自体が柔らかく、芝が長い、または芝の密度が粗い状態です。
そのようなグリーンで、極端なマイナスロフトでインパクトしてしまうと、ボールが芝に食い込むような転がりになることは間違いないでしょう。
残念ながら、【 こちら 】の実験データほどの転がりのよさは期待できないのです。
それではどうすればよいのか?
もちろんプラスロフトで打つことができるなら、それが一番グリーンの状態にマッチするでしょう。
しかし、今までマイナスロフトだったものを、急にプラスに変えることは簡単ではありません。
またパターの打ち方としては、ハンドファーストに構えてマイナスロフトでインパクトしたほうが簡単に感じる人が多いと思います。
その点を考慮すると、あまり極端なマイナスロフトにはならないように注意して、プラスロフトのメリットを頭に入れながら、自分にとって最適なインパクトロフトを探る、という手法がよいのではないでしょうか?
そのための練習の際は、くれぐれも練習用のマットの転がり方と、実際のグリーンの転がり方が一致しないことをお忘れなく!
最後に
たとえマイナスロフトのインパクトでも、小平智選手のように常に強めのタッチで打てるなら、曲がり幅を抑えることができるので、全く問題はありません。
ところがその小平智選手も、PGAツアーの戦いが長くなると、グリーンの状態に翻弄されてくるので、常に強めに打つことができなくなるのです。
荒れたグリーン面に対して、強めに打てないマイナスロフトは最悪の打ち方になり、全くカップに入らなくなってしまいます。
とにかくパターは、「 入れば何でもOK 」なのですが…
アマチュアゴルファーにとっては、強めのタッチのタッチで打ち続けることは、無謀な挑戦になりかねません。
無駄な3パット、4パットを減らすためには、やはり「 ジャストタッチ 」をお勧めしたいので、インパクトロフトについては、じっくりと考えて下さい。
また、インパクトロフトだけでなく、パッティング全般に関してレベルアップを目指すなら、【 パター 】の記事を参考にして下さい。