2020/01/15
優勝まであと一歩に迫った2017年の全米プロゴルフ選手権の松山英樹選手。
2017年の全英オープンでは、トップ争いの末14位タイに終わりましたが、今回の全米プロゴルフでは、「 敗因は無かった 」と言いたいほどの素晴らしい戦いでした。
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松山英樹選手の敗因分析
それでも、あえて粗さがしをして敗因をあげるなら、
① 優勝したジャスティン・トーマス選手にツキがありすぎた
大きく曲げたドライバーショットが木に当たってフェアウェイに戻ってきたり、ミラクルなカップインが続くなど、運を味方につけていた感がありました。
苦しい状況を耐え抜いて頑張っていた松山英樹選手にとって、目の前のジャスティン・トーマス選手のプレー内容には、相手のラッキーパンチを食らいまくったボクサーのようなもので、メンタル的には確実にダメージがあったのではないでしょうか?
② 練習しすぎた!?松山英樹選手
前週の世界ゴルフ選手権ブリヂストン招待で優勝。
全米プロゴルフでも最終日の途中までトップに立っていた松山英樹選手。
さすがに体力的にもメンタル的にも厳しかったはず。
それにもかかわらず、アメリカのメディアでも話題になったくらいの練習量を連日続けていました。
勿論練習は大事なのでしょうが、メジャーの優勝争いの重圧は別次元。
強靭なフィジカルとメンタルを持つ松山英樹選手でも、本人は自覚がなかったと思いますが、さすがに見た目には疲労が感じられました。
スイングバランスは最後までそれほど崩れていなかったものの、プレーの進行とともに左の下半身の踏ん張りが若干弱くなっていたように見えて、それが原因と思われる、ボールが右に逃げる傾向が目立っていました。
もし本人がその点に気付いたとしても、自分で踏ん張るように意識するのは、逆にスイングバランスを崩すだけなので効果はありません。
せめて大会期間中の練習量を少し減らすように調整出来れば、違う結果になったのではないでしょうか?
③ グリーン周りのアプローチショットでミスが続いた
これが今回のメインテーマです。
【 全米プロゴルフ選手権でメジャー初制覇を目指す松山英樹選手になりきってみましょう 】で、松山英樹選手のアプローチショットについて説明していますが、まるで松山英樹選手がその内容を読んだかのように、大会期間中は非常によい打ち方を続けていました。
ヘッドを加速させて上から打ち込んでスピンをかける日本方式の打ち方ではなく、スクエアスタンスでボールをセンターにセットして、ヘッドを加速させずにフェース面にボールを乗せて、柔らかくピンまで運ぶ打ち方です。
そんなよい打ち方だったにもかかわらず、ミスが続いてしまった原因としては、❶ メジャー特有のプレッシャー。❷ もじゃもじゃ状態の洋芝が難しかった。❸ グリーンを外した場所が悪かった。❹ 本人が感じていない疲労。❺ フェース面を開きすぎていた。この5点が考えられます。
❶ と❷ は説明はいらないと思うので、パスします。
❸ グリーンを外した場所が悪かった。
通常の大会では、たとえグリーンを外したとしても、もっと安全な場所になるように攻めて行くはずですが、それを許さなかったのがメジャー独特の空気感と、目の前の相手ジャスティン・トーマス選手だったのではないかと思います。
そのジャスティン・トーマス選手は今回の優勝で年間4勝目!
そしてこれまでの3勝のうち2勝は、なんと松山英樹選手が2位だったのです!!
178cmと松山英樹選手よりも小柄ながら、もの凄いスイングスピードで松山英樹選手よりも飛ばしているジャスティン・トーマス選手。
その飛距離だけでなく、プレー内容もPGAツアーNo.1と言える攻撃的なゴルフスタイルです。
彼の攻撃的なプレーを目の前で見せ続けられては、松山英樹選手も攻めないわけにはいきません。
守るだけでは勝てない相手だということも、十分に分かっています。
そんな状況だったので、ピンをデッドに狙い続けた結果、ピンに近いサイドに外したり、ピン奥に外したり、という難しいアプローチが続いてしまいました。
❹ 本人が感じていない疲労。
② 練習しすぎた!?松山英樹選手、で説明したように、知らず知らずの疲労感。ヘッドの抜けが悪そうな洋芝のラフから、ヘッドを加速させずに、そして緩ませずに打てていたものが、自覚していない疲労によって、結果的に緩んだアプローチショットになってしまったように見えました。
❺ フェース面を開きすぎていた。
最終日ではフェースを開きすぎたことによるミスが見られましたが、途中で本人が気付いたのか?後半は極力フェースを開かずに打っていたのですが…。
ミスの後で打ち直した時に、非常に柔らかくフェース面にボールを乗せて、距離感もピッタリの場面があったので、本当に微妙な感覚のズレがあったのでしょう。
松山英樹選手をはじめ、最近は60°のウェッジを使っている選手が多いので、アプローチショットやバンカーショットで、安易にフェースを開くのは考えものです。
フェース面を開いてしまうと、せっかくのフェースの溝を斜めに使うことになるので、懸命にスピンをかけようとしても、実際にはボールがフェース面を滑ってしまっている状態が多く見られます。
60°ならロフトは十分に寝ているので、フェース面は開かずに溝を有効に使ったほうが、柔らかく正確なコントロールが出来るはずなのですが…。
❶ ~❹ はミスの原因と言っても、仕方のない問題だと思います。
❺ に関しては、改善出来るアイディアがあります。
それは【 世界のトッププロと日本人選手とのアプローチショットの違いを分析 】で説明した「 ヘッドを減速させるコントロール 」です。
バックスイングを通常の距離感よりも2~3割くらい大き目にして、その大きくなったバックスイングの勢いを、ダウンスイングでヘッドを減速させて狙った距離感に合うようにコントロール。
この打ち方なら、芝の抵抗にも負けずに、ボールはフェース面に優しく乗って、「 フワリ 」と落としたい所にコントロールすることが出来ます。
この打ち方が抜群にうまいのが、ジョーダン・スピース選手とパトリック・リード選手。
ヘッドの重さを感じながら、緩まないようにだけ気をつければ、意外に簡単なテクニックなので、皆さんも試してみて下さい。
松山英樹選手は、これまでにテレビ画面で確認してきた中では、この打ち方を使ったことがないので、まだまだ進化の余地があります。
全米プロゴルフのアプローチを失敗したような場面に、「 ヘッドを減速させるコントロール 」を使いこなせれば、もはや無敵といえる領域に達することが出来るでしょう。
メジャー制覇まであと半歩と迫った松山英樹選手。
今後の試合では、その点にも注目してご覧下さい。