ここ数年のトレンドになっている「 高初速 」なドライバーとボール。
飛距離性能を上げるために「 初速性能 」が追求されていますが、そこには大きな落とし穴が潜んでいました。
今回は、皆さんがその落とし穴にはまらないように、緊急提言をさせていただきます。
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高初速の陰に潜む問題点を見逃してはいけません!
高初速化への背景
ゴルフ業界ではここ数年、急に「 高初速 」を売り物にした製品が増えてきました。
その要因は、おそらく次の2つ、① 行き詰った飛距離性能、② トラックマンの普及、にあると思います。
① 行き詰った飛距離性能
高反発規制のために、頭を抑えられている状態の飛距離性能ですが、それでもメーカーは何かしらの進化を示して、売上を伸ばさなければなりません。
そこで分かりやすいアピールポイントとして、数値として現れる「 初速性能 」に的が絞られている傾向なのです。
たしかに、打ち出したボールの初速が速くなれば、飛距離が伸びる可能性は高まります。
② トラックマンの普及
近年のトラックマンや類似商品の普及によって、ゴルフショップや試打会場などで、多くのデータが数値として示されるようになりました。
その中には当然「 ボール初速 」の項目があるので、売る側にとっては製品の訴求効果が高くなります。
このような要因で、ゴルフ業界は一気に「 高初速化 」に向けて突き進んでいます。
高初速の問題点を理解しましょう!
「 高初速 」になればボールが遠くに飛ぶ、という可能性はもちろんありますが、ゴルフとは、そんなに甘くはありませんよ。
絶対に忘れてはいけないことが、「 高初速 」なほどに、ボールを打った後にフェース面から離れる時間が短くなる、という点です。
これがどんな影響を与えるのかと言うと、「 高初速 」なほどコントロール性能、または操作性が低下してしまう可能性が高くなるのです。
コントロール性能、操作性がどうゆうものなのかを説明すると、誰しもがボールに当たった瞬間のごく僅かな時間に、フェース面のコントロールを無意識に行っています。
もちろん意識的にコントロールしている人もいます。
少しフェースが開いて当たったと感じれば、その瞬間につかまえようと意識する人もいます。
少しボールをつかまえすぎたと感じれば、左に行かないように逃がし気味に操作する人もいますね。
それが無意識でも、意識的にでも、実際のラウンド中には、このようなコントロール性能、操作性が非常に重要になってきます。
ところが、あまりにも「 高初速 」な状態だと、フェース面に接触する間もなくボールが飛んで行ってしまうので、コントロール性能、操作性などの感覚的なものが入り込む余地がなくなります。
この点を見逃してしまうと、初速が上がって飛ぶはずなのに、なぜか逆に飛ばなくなる可能性がでてくるのです。
ボールにも同じ問題点がある!
この「 高初速 」の問題、実はボールにも同じことが言えます。
もちろんボールも、「 高初速 」なほど飛距離性能が高くなる可能性はあります。
しかし、先の説明と同じく、ゴルフに関してはそんなに単純ではないのです。
落とし穴にはまってしまった実例
先日久しぶりに連絡を取った知人が、見事に大きな穴にはまっていました。
その知人はベストスコア76で、ゴルフ歴も非常に長いのですが、ドライバーには常に悩んでいて、今シーズンの初めにも、男子プロに人気の最新モデルのドライバーを購入したそうです。
もちろん練習場で試打をして、好感触だったので購入したにもかかわらず、ラウンドでは全く性能を発揮できなかったそうなのです。
全然飛ばないし、精度も低い。
シャフトを変えたりと色々もがいてみたものの、半年経っても改善できないので、結局そのドライバーは諦めて、今度はシニアプロに人気のドライバーに買い換えたそうです。
幸いにもそちらのドライバーはまずまずの結果が出ているそうなのですが、この知人の事例には、「 高初速 」の問題点が全てがつまっていました。
ポイントは3つあります。
① ドライバーヘッドとのミスマッチ
知人が購入した最新の「 高初速 」ドライバーは、男子プロの中でも、特にPGAツアーでヘッドスピード55m/s以上の超ハードヒッターに人気のモデルでした。
つまり、そのドライバーヘッドが最大に性能を発揮するためには、相当のヘッドスピードが必要だと言うこと。
ところが知人のヘッドスピードは、おそらく43m/sくらい。
…と言うことは、知人のパワーとヘッドスピードでは、ヘッド全体も、フェース面もほとんど撓まずに、「 チーン 」と弾くだけの当たりになっているはず。
そんな状態だと当たり前ですが、飛距離性能は宣伝文句のようには発揮できません。
そして、その後に買い換えたシニアプロに人気のモデルは、対象のヘッドスピードが40m/s~45m/sなので、知人のパワーとヘッドスピードでも十分に、ヘッド全体も、フェース面も撓んでくれます。
この「 撓む 」という状態があるならば、たとえ「 高初速 」であっても、コントロール性能、操作性はある程度確保できるので、全く印象が変わってきます。
② ボールもミスマッチだった!
知人から話を聞いた時に、その内容があまりにもひどい状態だったので、ドライバーヘッドだけでなく、もう1つ怪しいポイントが思い当たりました。
そこで、彼が使っているボールの銘柄を聞いたところ、僕が予想していたボールにピッタリと一致していたのです。
そのボールは、ツアー系モデルの中では最も「 高初速 」を売り物にしているボールで、「 球離れの早さ 」はピカイチです。
たとえば僕の奥さんがそのボールのスピンタイプを打ったところ、「 チーン 」という打感と「 球離れの早さ 」を嫌って、一回打っただけで使用を止めたくらいの「 高初速 」に特化したボール。
それなのに知人は、その「 高初速 」ボールのディスタンスタイプを選び、超ハードヒッター向けの「 高初速 」ドライバーヘッドで打っていたので、異常なほどの「 球離れの早さ 」になっていたと思います。
そんな状態だと、コントロール性能、操作性が低いのはもちろんですが、ボールがフェース面を滑りやすくもなっているので、ゴルファーにとっては「手の打ちようがない」状態なのです。
③ 練習場の試打にも落とし穴が…!
練習場で試打してドライバーを決める時に、気をつけて欲しい点があります。
広い練習場で、ミスが許される状況ならば、「 高初速 」を追い求めたコントロール性能、操作性の低いものでも、それほど問題は感じないはずです。
打席のラインに沿って目標を決めて何球も打てるので、コントロール性能、操作性は必要ないからです。
そして忘れてはいけない点が、練習場のボールの性質です。
ほとんどの練習場のボールは、初速が低いので、たとえ超ハードヒッター向けの「 高初速 」なドライバーを打っても、あまり違和感は覚えず、それどころか、ボールとヘッドの「 弾き感 」のバランスが、ちょうどよい具合にマッチしているかもしれないのです。
知人の場合はまさにこの状態であり、練習場のボールで調子がよかったので超ハードヒッター向けの「 高初速 」なドライバーを購入してしまい、ラウンドの時には「 もっとかッ飛ばしてやろう 」とばかりに、ボールも「 高初速 」モデルを選んでしまったので、ミスマッチが生まれて、大きな落とし穴にはまってしまいました。
たとえば「 高初速 」ボールで試打することができるならば、もっと正確な判断ができたはずです。
今回のまとめ
ゴルフ業界は、「 これはよい 」という事例が出ると、皆が1つの方向に突っ走ってしまう傾向があります。
たとえゴルフ業界全体で、「 これは飛ぶ 」「 これは簡単だ 」「 これは曲がらない 」と言っていても、そしてプロゴルファーがそう感じたとしても、本当に合うかどうかは、人それぞれ。
信じるべきは、自分の感性と飛んで行くボールの感触なのです。
その点に十分注意して、大きな落とし穴にはまらないようにしましょう。
※「 高初速 」問題への対策法
これまでに説明してきたように、「 高初速 」のドライバーとボールの組み合わせは、ゴルフがとても難しくなる可能性があります。
ゴルフロボットのように毎回正確に同じ動きができないと、突然大きく曲がったり、全く飛ばなかったりと、悪い結果が続いてしまうのです。
その対策方法としては、たとえばもしドライバーヘッドが「 高初速 」だったなら、ボールは柔らかめのスピン系を選んでみる。
もし「 高初速 」のボールを使いたいならば、自分のヘッドスピードとパワーでもヘッドがしっかりと撓むようなモデルを選ぶ。
こんな対策を考えてみて下さい。
● 好成績には理由がある
たとえば、国内男子シニアツアー最強のプラヤド・マークセン選手。
ヘッドスピードは推定50m/sくらいですが、使用しているドライバーはヘッドスピード40m/s~45m/sくらいを対象としているゼクシオ。
当然ヘッドもフェース面も十分に撓むので、ボールは飛距離重視のZスターのXVでも大丈夫。
ちなみにシャフトは、44インチの短尺仕様です。
このような組み合わせだと、飛距離とコントロール性能、操作性のバランスがうまい具合に取れるはず。
● 旧モデルは大丈夫
このブログでは、これまでに多くの短尺トライバーと『 重・短・小ドライバー 』を紹介していますが、どれも6年~15年前のモデルです。
まだそれほど「 高初速 」を売り物にしていなかったこれらの旧モデルは、飛距離性能が高いのに、「 球離れ 」はそれほど早くはありません。
そのおかげで、ヘッドスピード37m/sの僕の奥さんが、ハードヒッターモデルを使用しても、よほど「 高初速 」なボールを選ばなければ、特に問題点はありません。
このような点を参考にして、ドライバーヘッドとボールの組み合わせを考えてみましょう。